シスター・先生から(宗教朝礼)

2015.09.19

2015年9月16日放送の宗教朝礼から

 宗教朝礼を始めます。
今日は,日常生活の中で小さな感動を受けた出来事を紹介したいと思います。
ここ数年,私もめっきり白髪が目立ってきた為か,電車などでよく席を譲られることが多くなりました。大概声をかけてくださるのは,大学生や高校生の女の子や男の子が多いです。
1~2年前に初めて電車の中で「どうぞおかけ下さい。」と声をかけられた時は,気恥ずかしさと,自分がそういう状態にある者なのかと自覚するまで,けっこう複雑な思いがありました。しかし,最近はもう免疫ができて,素直に従う自分になっています。気持ちは不思議と今も高校生~二十歳のままなのに,この身体はきっちりと年齢と並行して侵攻していることを自覚します。
さて,この夏休み中も山手線に乗ったときのことでした。そこそこに手荷物を持っていたつもりでしたが,他人にはきっと重そうに見えたのかもしれません。吊革につかまって立った瞬間,私の前の女の子がすーっと立って「どうぞ座ってください。」と顔を見つめて話しかけてきました。ハッとして「大丈夫です。もうすぐ降りますので…。」と申しますと。「荷物だけでも…。」と言ってくださるではありませんか。何だかあまりの丁寧さに心うたれ,「そうですか。それではありがとうございます。」と応えて座らせていただきました。女の子は友人と並んでかけていました。二人ともいわゆるスマホを操作しながら何か話していました。私に席を譲った彼女は立ちながらも携帯電話は使い続けていましたが,お互いのおしゃべりはぴたりと止めていました。 私と目と目があったそのときの彼女は多少化粧はしていましたが,表情はとても爽やかで,目がきらきらと輝いていました。その透明さに私の心も吸い込まれそうで・・・びっくりして見つめ合っていた私もついにこっとしてしまいました。
席に座ってほっとして改めて周囲を眺めてみると,彼女たちは大学生か高校生くらいでした。身なりは,まず頭のてっぺんにぎゅーっとおだんごを結び,黒のTシャツと黒のズボンでした。そして上下には白字で何か大きく文字が描かれていました。ズボンというのはよく土木作業員がはいている“ニッカボッカ”風のあの裾広がりのデザインで,何かのイベントに行くらしい服装でした。いわゆる一見ヤンキー風に見える女の子たちだったのです。私の頭の中には,このように一見自分たちのことしか考えないようなヤンキー風の子たちは,気を利かせて席を譲ったりなどという行動はおそらく取らないのではないか,という思いがありましたので,今回の出来事は感心させられたと同時に,私自身反省する体験にもなりました。
先入観でつい人を見てしますことがありますが,私はこれを恥じ入りました。
お別れの時,私からの御礼の言葉に対し,彼女はニッコリ会釈で応えてくださいました。この日はいい気分で家路についた私です。そしてやはり考えさせられることは,『この子たちはきっと家庭や学校できちんとした躾を受けてきたんだろうなあ・・・』という思いに至ることです。
席を譲ったり譲られたり―こういう日常目にする光景,そこには小さなドラマが展開しているのです。今でも,あの爽やかな女の子の笑顔ははっきりと私の脳裏に残っています。
これで宗教朝礼を終わります。


S.K.(寄宿舎)