シスター・先生から(宗教朝礼)
2014.09.10
2014年9月10日放送の宗教朝礼より
おはようございます。宗教朝礼を始めます。
私たちの悩みにはいろいろなものがあると思います。悩みの中には,いくつかの選択肢から何か一つを選ばなければならないというものがあろうかと思います。テスト問題の選択肢には,必ずどれかに正解が隠れていますが,人生の分かれ目においては,どちらにも不正解はないものの,一つしか選ぶことはできないということがあります。どちらかを選べば,他方を捨てることになります。そのときに未練が残らないように,自分が選んだ一方によって本当によい歩みができるように,そのためにどうしようと悩むものです。
進路に悩む高校生に,私自身がどのように進路を選ぶことになったのか訊かれたことが何回かあります。進路は,その人の将来への興味関心,能力,育ってきた環境などによって人それぞれのものですから,私の選びと同じことをしても意味がないことはあらかじめ伝えることが多いのですが,語らないのも無責任なので紹介します。私の場合は,幼稚園からずっと公立の学校で育ってきたので,学校の創立精神というものとは無縁で,それを基準に選ぶことはありませんでした。私立学校で学ぶ多くの人たちが創立精神を考慮して学校選びをすることに感心しています。しかし私はそのように創立精神を学校選びには考えたことはありませんでしたので,ただ純粋に何をどのように学びたいか,将来何になりたいかが私の学校選びの基準だったと思います。大学の4年間は興味ある理科を研究し,そしてその基礎を学べるように。卒業後は,小学校か中学校か高校のいずれかで教員として働きたいから,そうした免許がとれるところに。理科の研究の内容は,DNAとか分子生物学を学んで,生命の神秘に触れたいと思っていました。私が高校生だった当時,日本人でノーベル賞を取った利根川博士が,化学出身で分子生物学を研究されていたことから,化学科で生物化学を研究できるところに進学したい,そう思って大学・学部を選んだのです。希望しただけでその道に進めるわけではなく,大学受験,研究室を選ぶとき,就職のときなどとそれぞれ試験や成績などが求められるのですから,好きな理科だけではなく,関係する教科の勉強が苦手なものであってもそこからも逃げずに取り組みました。
大学を卒業して不二聖心で理科を教えることになり,多くの生徒たち,不二をはじめ姉妹校や他の学校を含めた多くの先生方,あるいは理科好きな社会人の方々など,これまでに出会ったすべての方々との交流や学び合いを通して,私自身が自然科学の眼でこの世の中の真理を求めること,聖心の学校で生徒が真理を学び社会に貢献する女性となるよう教育に携われることは本当に良かった,私の使命だったのだと確信するようになってきました。
さて,今日私は,自分の進路のために努力することを伝えたいのではありません。悩んだときにどう選ぶかを伝えたいと思っています。
私は結果的に幸せな選びをすることができたと思いますが,それぞれの節目で選ぶとき,選んだ後も壁にぶつかるごとに,自分のこれまでの選択はよかったのかと悩んだものです。
先ほど私の選んだ基準は「何を学びたいか」ということだったと話しましたが,別の観点から自分が基準にしていたことを考えると,それは当初「損得で決めない」ということだったと思います。もし損得で決めるなら,楽であるとか,収入が多いとかそうした基準になっていたことでしょう。「学校の先生になりたい」と高校時代に担任の先生に相談したところ,「教員という職業は儲からないけどいいのか」と訊かれ,「もともと貧乏なので,生きていけるだけのお給料がもらえて,あとはやりがいがあれば大丈夫です」と答えたことを覚えています。
不二聖心に勤めるようになり,いろいろ苦労もありましたが,祈りの会や先生の研修など自分のことを振り返る機会を多くいただきました。その中で私は,迷ったときには,損得なしというのも大切な基準だけれども,自分をこの世に送り出してくださった神様が喜んでくださる基準をもって生きていこうと思うようになりました。今はそれで間違いないと思っています。
神様,あるいは神様でなくても自分の拠り所のような存在があると思いますが,皆さんのどんな姿,生き方を喜んでくださるでしょうか。
私は,神様が自分に与えてくださった宝物を放置しないで,それを磨いて人のために生かしていく。そうした生き方を神様が喜んでくださると思いました。
選択に悩んだときに,自分の宝物は何だろうと模索し,それを生かした生き方をすればいいのです。選んだ後それを実践していくのは簡単なことばかりではありませんが,自分らしい生き方ができ,本当の喜びがあると思います。宝物を与えてくださった神様は喜んでくださるに違いありません。
不二聖心で学んでいるみなさんが,一人ひとりが神様からいただいている人柄や才能などの宝物を生かし,人生を豊かに生きていくことができるように・・・明日からの祈りの会で,自分の拠り所や価値観,自分に与えられた宝物を少しでも多く自分の中に見つけられるといいですね。
これで宗教朝礼を終わります。
K.S.(理科)