シスター・先生から(宗教朝礼)

2014.07.09

2014年7月9日放送の宗教朝礼より

おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。
夏休みが近くなりました。皆さん、各教科からみの宿題について先生方からお話があったことと思います。
私は国語科の教員なのですが、国語科では、毎年読書感想文を夏休みの宿題に出しています。
毎年のことなので、生徒の皆さんはもちろん承知してくれていると思うのですが、授業の際に、「えー、夏休みの宿題ですが、まず読書感想文と…」とこちらが言ったか言わないかのうちに皆さんから発せられる、「えー!」という声にいつも驚いてしまいます。毎年のことなのに、まるで初めて聞いたかのように口をとんがらせたり、絶望的な顔をしてみせる皆さんの表情を、最近は夏休み前の風物詩として最近はほほえましく見ています。
ところで、皆さんは読書感想文を書くのが嫌いですか?
今、スピーカーの向こうで、「嫌い~」と思っている皆さんの様子が目に見えるようです。でも、本当に嫌いですか? なぜ嫌いですか?
私が皆さんの様子を見る限り、そんなに読書が嫌い、という人はいないように思います。私は今中学3年生のHRに行っていますが、どちらのクラスでも読書の時間に真剣になって本を読み、最後の挨拶のために立ち上がっても先を惜しげに本を持っている人の姿を多く見ます。休み時間にも続きが気になって読んでいる人もいます。図書委員が作って配布してくれる「ライブラリー・ニュース」や、M先生が作って下さる読書案内「昨日の新聞から」を楽しみに読んでいる皆さんの姿からは本、読書が嫌いという印象は受けません。
それならなぜ「感想文」となるととたんに嫌になるのでしょう。本を1冊読んだら、それについての感想は皆さん誰もが持つでしょう。面白かった、感動した、怖かった、切なかった…など。「何も感じなかった」ということはないと思います。その、面白かった、感動した、あなたの気持ちを教えてください。それが読書感想文です。提出する感想文、というとなんだか構えてしまって上手に書くことを考えてしまうので堅苦しく嫌なものに思えてきますが、感想文の出発点は、その読んでいる間、読み終わった後に感じるあなたの素直な気持ちです。
でも…「読んでみたら面白くなかった・つまらなかった」ということもあるよ、という人もいるでしょう。読書は自分の世界を広げるものです。正直言えば、深く感動して、自分の手元にいつも置いておきたい、いつかまた読んでみたい、という本に出会ってほしいというのが願いですが、でも、面白くなかった・つまらなかった、というのも立派なあなたの感想です。その一言で終わらせずに、何が面白くなかったのか、期待外れだったのか、共感できなかったのか、それを教えてください。だいたい面白くない理由といえば、自分には理解不能の世界や展開・主張、主人公と自分がかけ離れていて共感できないという心のもやもやが原因なのではないでしょうか。そのもやもやを原稿用紙にぶつけてみてください。タイトルでこんな物語を想像していたのだけれど、実際はこんな話で、自分が今生きている現実とはかけ離れていた…なら、自分が今生きている現実ってどんなものなの? 主人公にどうしても共感できない…なら、私だったらこういうときこうするのに、なぜこの主人公はこうなの? 「面白くなかった」ことも、ただその一言だけだと他人事で、その本も遠い存在のものになってしまいますが、自分と重ねたり比べたりしているうちに、少しは共感が生まれたり、共感はできないけれど言っていることはわかる、と次第に近づいていけるでしょう。
書いているうちにあらすじばかりになってしまうのですが、という相談もよく受けます。感想文と言っても、それはやはり自分だけのものではなく、読む相手がいます。そのことを考えたら、あらすじが全くなく感想ばかりの文は、一体どんな本を読んだのかわからないことがあります。なので、あらすじはある程度入れてもらわないと読む方はむしろ困ります。私は毎年皆さんからのたくさんの感想文を読むので、皆さんがそこに書いてくれるあらすじをただ読むだけで自分がまるでその本を読んだような気になれるという特典があります。毎年とても楽しみです。ただ、どう入れるかによって、あらすじばかりの感想文なるかどうかが分かれます。
私の方法で感想文を書くとこんなふうになります。強く言っておきますが、あくまでも参考です。みんながみんなこの通りの書き方をしたら、夏休み明けに私が皆さんの作品を読む楽しみが減ってしまうのでやめてくださいね。
まず、はじめからあらすじを書きません。よっぽどの強い動機がない限り、その本を選んだ理由もいりません。例えば、「読む本がなくて本屋に行ったら話題の本コーナーにあったので手に取ったら面白そうだったのでこの本にしました」これ、いりませんね。まずは自分が最も心惹かれた言葉や場面を取り上げて、それについての自分の感想を書きます。ここは長くなくていいです。1枚目原稿用紙の4分の3くらいまで。1枚目の終わりぐらいから、ここであらすじ登場。ただし、2枚目の半分くらいまでにまとめましょう。また、あらすじは物語の結末まで書かず、自分が最初に取り上げた部分につながるところで終わりにします。そしてまた最初に取り上げた部分について詳しく書いていきます。このとき、自分の体験や日常と重ねたり比べたりしてそれを入れるといいでしょう。読書が自分のこれからの未来につながることはもちろんですが、逆に、自分が経験したことや知っていることを読書で再確認することも読書の楽しみなのです。物語の主人公と同じ経験をしたことがある人、逆のことをしたことがある人、本に書いてあることを試してみた人、自分の体験ならたくさん書けます。ただ単に本の字面をなぞるだけでなく、今生きている自分に本を引き寄せてみてください。
そこまでいったらあとは物語の結末と読後感を書きましょう。これで最後の1枚。読んだ後に残ったもの、これからへの展望。そして、想いを文字にしたことによってはっきりと明らかになった自分の気持ちがあるかもしれません。それを書いてください。
もうすぐ皆さんのお手元に渡ると思いますが、図書委員さんが今年も先生方からのおすすめ本の冊子を作ってくれています。不二聖心にはそのように読書に触れるたくさんのきっかけがあるので、みなさん夏休み中にぜひよい読書をしてください。
最後に、私が高校2年生の時の同級生が書いた、感想文の書き出しを紹介して終わりにしたいと思います。「この本は、晴れた青空の下、青々と葉を茂らせた大きな木の下に座ってゆったりとした広い心で読んでほしい。いや、そうやって読むべきだ。部屋の中で読むにはもったいなさすぎる」…いかがでしょう。こうやって紹介された本も、この感想文の続きも読みたくなりましたよね。書き出しは大切です。豊かな読書体験を感じさせてくれる、すてきな書き出しを期待しています。

                              M.S.(国語科)