シスター・先生から(宗教朝礼)

2013.11.15

2013年11月13日放送の宗教朝礼より

 あなたはどんな人間ですか?
こう聞かれたら、みなさんはどう答えるでしょうか。
中学、高校生だったころの私は今よりもっと感情の起伏が激しくて、他者に対して批判的。勉強(点数のつくもの)には自信があったけれど、それ以外の面では劣等感にさいなまれることが多くありました。自分が好きかと言えばためらってしまうし、誰かに自分の気持ちをわかってもらいたいけれど、自分から言うのは変なプライドがあってできなくて、何にも言わなくて周りの人が気がついてくれることを願い、実際には気づいてくれないので文句ばかり言っていました。(自分で「つらい」とか「悲しい」とか言わないのに、周りの人にそれを察してくれなんて、都合がいい話です。でもその頃の私はそうしてもらいたかったのです。きっと、「弱いところを見せたら負けだ」みたいな思いがあったからでしょう。そのくせ、友人を思いやる気持ちは少なかったように思います。本当に身勝手です。)
勉強はテストの点に表れます。数字はわかりやすいですね。0から100の間で自分が表されて、はっきりしています。でも点数で表せない部分の私はどうでしょう。友達の方が流行のものや世の中のことを知っている、運動が得意で何の苦もなくボールを飛ばせたりする、編み物や家庭的なことが上手で毎日のように家族のご飯を作っていたりする友達もいれば、いつも周りの人と仲良く楽しくすごしている人もいます。人と上手に関係を保てる人が多くいました。そのような友人と比べると、自分は足りない、劣った存在に感じられることが多くあったのです。
不二聖心に来て、20年以上の時が経ちました。小・中・高・大の学生としての生活より、教師としての生活の方が長くなり、不二聖心での生活が私の人生に占める割合も大きくなってきました。今でも失敗やくよくよ考えてしまうことがあるのですが、不二聖心に来たばかりのころはもっと失敗をしました。うまく授業ができなくて泣いてしまったこともあるし、先輩の先生方にご注意を受けることもありました。失敗を他の先生方がフォローしてくださっていたということを後になって知ったこともたくさんあります。そしてなにより、生徒の姿から学ぶことが多くありました。
先生とお話をする時、階段で自分の立っている位置に心を配って、先生より下の段に立つ。目上の人と話をする時座っていないですぐに立ち上がってお聞きする。荷物を持っていると「お持ちいたします」といって手をさしのべてくれる。母の日や、行事の時など折に触れてかわいらしい手作りのカードを贈ってくれる。そこには必ずあたたかい言葉が書かれていること。友達に支えられたことを素直に話せる。努力していることを自慢するわけでもなく、自然に表せる。そのような友人の努力を認め、互いに高めあっていける。周りの人に支えられたことを実感し、感謝できること。
他にもいっぱいありますが、これらに共通するのはテストの点数では表せないことです。でも人間として必要なことと思われることです。私は大学を卒業するまでずっと公立の学校で学んできました。良い学校だったし今でも好きですが、不二聖心で大切にしているものを私は生徒として学んでこなかったことに気づきました。それから少しずつ私は学んでいきました。人はよいところ、輝くところを必ず持っていること。それを互いに認めること。助けてもらう、支えてもらうことは恥ずかしいことではないこと。助けてもらった時、素直に「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えることの大切さ――まだまだ足りない部分はありますが、昔の私よりは少しでもバージョンアップしているように思います。
今月の生活目標「美・Elegant」も聖心らしいものです。エレガントからはほど遠いけれど、いくつかの仕事を私は何とかがんばってやっています。このようなことは女性は上手だという話を伺ったことがあります。どのようなことか見当がつきますか?それは料理です。皆さんのおうちでご飯を作ってくださる人は誰でしょう。みなさんの中には家族のご飯を作っている人もいるでしょう。ご飯の支度には段取りが大切です。おかずを作ってしまったあとに、お米を炊き始めたら時間が30分くらいずれてしまいます。まず、お米をといで、浸水させ、おかずでも煮込んだりするものは早めに野菜を切ったり準備をします。その合間に洗濯物を干したり、あるいは取り込んだり……。お味噌汁のお味噌は適当に入れて、足りなかったら足すし、多すぎたら今日はちょっと我慢するか、お水(!)を足してしまうか……おうちの仕事は毎日の繰り返しですが、でもたくさんのことを同時にやっているのです。皆さんの周りにいる「美・Elegant」を実践している人を探してみてご覧なさい。きっといるはずです。その人の「すごいなあ」「すばらしいな」と思うところをあなたのものにする努力をしてみましょう。聖心女子学院が掲げていることの中には、社会に貢献する女性を育てることがあります。社会に出た後、大きく羽ばたくために、みなさんが今ここで心と体のアンテナを張って、たくさんのことを吸収してほしいと願っています。

M.H.(国語科)