シスター・先生から(宗教朝礼)

2013.05.29

2013年5月29日放送の宗教朝礼より

 今週の金曜日は、マグダレナ・ソフィア・バラの祝日です。皆さんがご存じの通り、彼女は聖心会を創立し、生涯を女子教育に捧げました。

今日は、NGOプランや、Room to read、ユニセフといった団体の資料等を元に、女子教育に焦点を当てて、お話したいと思います。

全世界には、読み書きのできない人が約7億9300万人もいると言われています。その3分の2は女性という、教育における男女格差の現実があります。また、全世界の11歳から15歳の女の子のうち、3,900万人が学校に通っていないと言われています。この年頃になると、このような女の子達の暮らしは、教育を犠牲にして、家庭での役割や母親としての役割を中心としたものに移っ ていきます。小学校に入学する女の子の割合は世界中で男の子に追いついているにも関わらず、小学校を卒業できる割合は男の子に大きく後れを取っており、思 春期に差しかかると、女の子たちは貧困や差別の圧力によって学校を去ることを余儀なくされます。世界の多くの社会には男女の役割を分ける伝統的な慣習や、 男女の差別が残っています。女の子は早く結婚して家の中のことをするものだとか、家事をする女の子に学校の勉強は役に立たないという考え方が残っているの です。兄弟すべてを学校に通わせるお金がなければ、男の子が優先されることが多くなります。女の子の多くが家族の生活のために働きに出されたりしていま す。妊娠・結婚で中途退学をする例も後をたちません。その他に、学校に女の子用のトイレがなかったり、女の子が差別や暴力を受けたりするなど、女の子が通 いやすい学校がない場合があります。また、学校が遠く、通学路が危険だと、親は心配して女の子を学校に行かせないという理由もあります。

特に、途上国の女の子や女性たちは貧しさの中にありながら、「女の子・女性であること」で社会の底辺に置かれ、より困難な状況 に直面しています。彼女たちは学校へ行くことがより難しかったり、医療を受けられなかったり、十分な食事を与えられなかったり・・・。このように様々な機 会を制限されながら、さらに暴力や性的嫌がらせを受けやすく、早すぎる結婚や家事労働を強いられます。

しかし他方で、女の子や女性たちに力を注ぐこと、教育や学ぶ機会をもたらすことが、彼女たち自身だけでなく、彼女たちの家族や地域、さらには国にとっても、貧困削減につながるということが証明されているのです。というのは、女の子の中学・高校の修了率が高まることで、世帯あたりの人数の減少、健康的な家庭環境、HIV感染率の低減、賃金の上昇などがあげられます。例えば、アフガニスタンでは1,000人中257人(日本は4人)の子どもが5歳の誕生日を迎えることができないなど、途上国の子どもの死亡率は深刻ですが、女の子が初等教育を5年間受けると、保健・衛生、栄養などの知識を得るため、将来産む子どもが5歳まで生き延びる率は40%以上も上がると言われています。また、ジンバブエでは、学校に通う15~18歳の女の子は、HIV感染率が5分の1になるそうです。さらに、教育を受けた女性たちは、教育の重要性を知っているの で、子どもたちにもより良い教育を授けようとします。こうして、負の連鎖を断ち切ることができるのです。長い期間にわたって女子教育に力を入れてきた地 域、たとえば東南アジアなどでは、経済開発の水準がより高くなっています。女の子の小学校へ入学する割合が上がるにつれて、一人あたりの国内総生産も増え てきています。コフィー・アナン前国連事務総長は「女の子の教育以上に効果的な開発手段は存在しない」と言っています。

 日本においては、先進国の中ではまだまだ遅れているとは言われているものの、戦後は男女平等の教育改革が行われ、男女雇用機 会均等法という法律も制定され、女性の社会進出がどんどん進んでいます。日本社会全体で少子高齢化が加速度的に進み、これから女性が働き手として活躍して いかないと、社会経済が回らない状況になってきています。近年、共働きの世帯は、そうでない世帯の数を上回り、これから女性の社会進出が著しく増加してい くのは明らかです。そういったこれから活躍していく女性の渦の中心にいるのが、みなさんのような若い世代の女性たちです。「頑張れば、手に入る」という 「頑張れる」という状況にすら、スタート地点にすら立てることのできない女性たちが世の中にたくさんいるということを知っておいてください。もちろんこう した苦しい状況にいるのは、女性だけとは限りませんが、明後日、マグダレナ・ソフィア・バラの祝日を迎えるにあたって、女性が学ぶということ、自分達がこ うして学べる環境を与えてくださった神様、保護者、先生方、そしていつも共に頑張ってくれる友人達に深く感謝し、一度自分が置かれた状況について考えてみ るよい機会ではないでしょうか。皆さんが学校や様々な機関を通じて学び得た知識が、成人してからの様々なチャンスを開く道となるのです。

 時間は誰にでも平等に与えられていますが、あっという間に過ぎてしまいます。毎日何かをやり遂げるつもりで、集中して勉強し、その成果を自分の為、世の中の為に生かせるよう私自身も皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。

  S.M.(数学科)