シスター・先生から(宗教朝礼)
2012.10.24
2012年10月24日放送の宗教朝礼より
これから宗教朝礼を始めます。
皆さんは陸上の、「ブレードランナー」のニックネームを持つ、両足義足の選手オスカー・ピストリウス選手を知っていますか。今年のロンドンオリンピックで話題になった選手の一人です。
生まれた時から、両足の腓骨がなく、生後11ヶ月で膝下を切断しまし た。義足のランナーとしてパラリンピックに出場するまでになりました。彼はそこで満足するのではなく、健常者の大会に参加したいと思うようになりました。 ところが、国際陸上連盟がそれを認めませんでした。そこで、彼はスポーツ仲裁裁判所に申し出ました。その結果、ようやく出場資格が認められたといういきさ つがあります。
見事去年、標準記録を突破することができて世界選手権に出場しました。そして、今年は念願のオリンピック出場を果たしました。400mと1600mリレーの2種目に出場しました。
健常者の記録に届かない間は、かわいそう、ハンディがある中で立派などと、もてはやされていましたが、いざ国際大会に出場できるように なるといろいろな中傷ややっかみとも思える発言が出てきました。カーボンの義足でバネがあり有利だとか、膝から下の足がないので乳酸がたまりにくいとか、 義足のもたらす推進力と疲労を抑える効果を指摘する声もあがりました。
何はともあれ、彼の走りは義足とは思えないほど、実にスムーズできれ いな走りをしています。両足膝から下がない中で、健常者と同等に走る、それもトップアスリートと肩を並べて走ることは驚きです。本当に立派なことだと思い ます。義足は人間の足に比べて柔軟さに欠け、スタートダッシュにも向いていないと言われます。カーブへの対応能力も劣るということです。切断部が義足と擦 れることで痛みも伴います。彼は筋力トレーニングを積み重ねることで、ピッチを上げ、後半の追い込みで、スタートの出遅れをカバーするスタイルを作り上 げ、これらの短所を克服したというのです。並大抵の努力ではなかったと思います。普通の健常者の大会に出る。それも世界選手権やオリンピックです。とても 考えられないことです。それを思うと色々な声があっても、本当にすごいことです。また、逆に言えば健常者にアンフェアだとまで言わせることができるまで、 タイムを上げてきた彼は素晴らしいということだと思います。
どうやって、彼はハンディキャップを乗り越えて来たのでしょう。普通の人であれば、夢のまた夢で終わってしまうような話です。あきらめてしまうような高い壁だと思います。
何事もそうですが、最初から上手くいくことばかりではありません。障害や困難はつきものです。そこを1歩ずつ上がっていったのです。壁に跳ね返され、逆に後戻りすることもしばしばだったと思います。でも、そこから努力を続けたからこそ今の彼があるのだと思います。
女子サッカーのなでしこジャパンもそうです。去年のワールドカップで優勝し、今年のオリンピックでは惜しくも決勝で破れてしまいましたが、見事銀メダルを獲得しました。多くの人々に感動を与えてくれたことは記憶に新しいことです。
彼女たちこそ逆境の中、練習を積み重ね、団結力でメダルを勝ち取ったのです。
辛い中だからこそ、お互いが励まし合い、恵まれない環境にあっても夢をあきらめず、好きなサッカーに打ち込んできた成果なのだと思います。
なでしこたちは今はサッカーに打ち込める環境にいますが、昔はアルバイトをしながらサッカーの練習を続け、自分たちの専用の練習場もない中、苦労して練習をして技術を磨いてきました。逆境に耐えてきたからこそあきらめない気持ちが強くなったといえるのかもしれません。
なでしこジャパンの試合を見ていると彼女たちは本当に楽しそうにプレイをしています。そして、お互いの信頼関係が築かれていてチームプレイが素晴らしいと感心します。彼女たちは自分達の強さの秘訣は団結力だと言っています。
そう言えるのは、厳しい練習の裏づけによる技術力と精神力の賜物といえます。そして、お互いの信頼関係と深い絆があったからです。それを支えていたのは皆サッカーが本当に好きだから地道な日々の努力を続けられたのだと言っています。
「夢は叶うものではなく、叶えるもの」という言葉があります。夢は何もしなくて叶うものではなく、自分で努力して叶えていくものということです。
それを実践したのが澤選手です。澤選手は「夢は見るものではなく、叶えるもの」と自身も語っています。
澤選手はサッカーに人生をかけ、全身全霊で女子サッカーの先駆者として、女子サッカー界を引っぱってきました。そして自分で夢を叶えてきました。常に先頭を走り、後に続く人たちに道を切り拓いてきました。
夢はあきらめたら、そこで終わってしまいます。どんなことがあってもあきらめずに努力を続けられたら、いつかきっと叶うものに変わっていきます。
なでしこジャパンを16年以上取材し、追い続けた早草紀子さんが書いた「なでしこの教え」という本にもこの言葉が書かれています。この本はあきらめない、なでしこたちの言葉がいろいろ書かれていて感動します。
その中に「“できない”のを環境のせいにしない」という教えもありま す。それは、時間がないから出来ない、あれが揃わないと出来ない…。とかく人は、上手くいかない理由を誰かや何かのせいにしてしまい、周りの環境のせいと 言うことがよくあります。そう言うのは簡単です。しかし、彼女たちは「だから勝てません」とは言わないし、言い訳にもしない。まずはその環境下で結果を出 すことを考えることが大事、と言います。
言い訳をせず、自分に与えられた中で、どう努力をするのか、そしてどう結果をだすのか、その結果はすべて自分の責任ということです。かっこ良いと思いませんか。
それぞれの人が自分らしい夢を持ち、どんな環境にあっても自分のできる最大限の努力をする、そうすれば結果はおのずからついてくるものです。
皆さんには、自分の夢を語るだけの人で終わるのではなく、夢の叶え方を知る人になって欲しいと思います。自分らしい夢を持ち、叶えていってください。
これで、宗教朝礼を終わりにします。
*参考文献 「なでしこの教え」 早草紀子著 武田ランダムハウスジャパン発行
Y.H.(保健体育科)