シスター・先生から(宗教朝礼)
2012.07.04
2012年7月4日放送の宗教朝礼より
おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。
2週間ほど前、私は高3の選択授業の準備である古文を読んでいました。問題集をコピーした文章だったので、出典などは全く気にせずに読み始めたのですが、 読んでいるうちに、「あれ、これどこかで読んだことがある」と思いました。出典を調べてみると、それは『とはずがたり』という、鎌倉時代末期に書かれた日 記からの抜粋でした。作者は後深草院二条という女性です。
しかし、私はこの『とはずがたり』をそれまでに読んだことはありませんでした。なんで知っているんだろう、と考えたときに、実は以前マンガで読んだことを 思い出したのです。それも、そのマンガを読んだのも特にその話だったから、というわけではなくて、単にそれを書いていた漫画家さんの以前の作品が好きだっ たからです。5年ほど前ですが、たまたま書店で懐かしいその漫画家さんの名前を見かけて手に取ったのがそれでした。「へぇ、この人最近は時代物を書いてる んだ」というのが最初の感想でした。
しかし、読み進めているうちに、私はすっかりそのマンガに夢中になってしまいました。舞台は鎌倉時代も終わりの頃、政治の実権は北条家が握っているなか、 京都では二人の天皇が、どちらが皇統、つまり天皇家の血筋を継承していくかで争っていました。ちょうどモンゴルのフビライ・ハンが日本に2度にわたって攻 めてきた頃のことです。主人公はその片方の天皇に仕え、寵愛を受けていた「二条」という名の実在した女性なのですが、彼女はその天皇家の血筋争いに翻弄さ れる形で、数奇な運命を生きていくことになります。マンガは5冊ありましたが、一気に読み切ってしまいました。
私はその女性の生き方にもいろいろ考えさせられることがありましたが、何より感じたのは、一つの歴史の中にこれだけのドラマが詰まっているのだなぁ、とい うことでした。その時代のことは確かに私も昔学んだ記憶があったので、高校時代の教科書を引っ張り出して見てみましたが、教科書にはほんの1・2行、「皇 統をめぐり持明院党と大覚寺党とに分かれ、後、両統迭立となった」というようなことが書かれているだけでした。(中学の教科書には載っていないようで す。)私はおもしろいなぁと思いました。教科書の内容は私も高校時代に一生懸命覚えたので、単語としては頭に残っていました。しかし、本当はそこに暗記な ど及びもつかない深い歴史があり、実際に生きていた人がいて、いろいろなことを考えたり感じたりしていたのです。遠い昔のことなのに、急に身近に感じられ た瞬間でした。私はその頃の歴史を調べたりして『とはずがたり』にしばらくかぶれました。そしてまた今回、授業でそれを扱うことになったのです。この再び の巡り合わせに、私ははりきってその内容を高3の方々に熱く語りました。
学びて時に之を習ふ、亦悦ばしからずや。
中3以上の人は国語の授業で習ったことがあると思います。中国の思想家である孔子の言葉です。あることを学んで、また然るべき時にそれを復習する、それは なんと喜ばしいことではないか、という意味です。この「然るべきとき」という部分の説明がなかなか難しいのですが、私はこの「然るべきとき」、というのが 私の体験したそのものではないかと思うのです。高校時代に暗記したものを、ずっと後になって、きっかけはマンガでしたが、もっと知りたいと思い、再び学び 直すことになりました。そしてまた数年後にそれを高3の方々と読むことになり、遅ればせながら原作も読んでみました。授業の中で自分の感じたことを高3の 方々に伝え、共感してもらうこともできました。本当に、それはなんと充実した、嬉しい時間だったことでしょう。学んだことはそこで終わりになるのではな く、めぐりめぐっていつかどこかにつながっている、今だけでなく、この先にもきっと。勉強するって楽しい・嬉しいことだなぁ、と思いました。学生時代は辛 くていやでしょうがなかった勉強ですが、今のこの嬉しい気持ちを感じるためにあのとき勉強してきたのかもしれないと思ったほどです。ちょっと言い過ぎで しょうか?
みなさんもありませんか?以前に授業で学んだことが思わぬところで役に立ったり、本で読んだことを実際目の前で見たり体験したりして感動したりしたこと が。それが「学びて時に之を習ふ」なのだと思います。私にはそういう経験が他にもたくさんあります。ここですべてお話できないのがとても残念ですが、もし かしたら、ある程度年をとらないと体験できないことかもしれません。
と、いうわけで、皆さんも乞うご期待、もう少しすると「勉強しておいてよかった~」と楽しくて嬉しくて仕方がないときがきっとたくさん来ます。本当です。その日まで、ぜひめげずに勉強を頑張ってください。応援しています。
M.S.(国語科)