シスター・先生から(宗教朝礼)

2012.05.16

2012年5月16日放送の宗教朝礼より

 これから宗教朝礼を始めます。

みなさんは、校長室前の掲示物に気が付いていらっしゃいますか?宗教科の先生方が、いつもその時期に合わせて掲示をしてくださっていますね。今月、5月25日は聖心の創立者、聖マグダレナ・ソフィアの祝日です。この祝日は1865年5月25日に亡くなったことに由来しています。

今日は、私にとっての創立者についてお話したいと思います。

私 が創立者について知ったのは、中学に入る時に、「聖マグダレナソフィアの生涯」の本をいただいたことに始まります。中一にとっては少し難しかったのです が、入学後間もなく、もう一冊、児島なおみさんのかわいらしイラストで描かれた絵本をいただきました。優しいイラストと、短いけれども印象に残る言葉が書 かれています。いただいてから長い月日がたち、表紙は少し色があせてきてしまいましたが、今でも大切にしている1冊です。

数年前の夏、姉妹校の先生方と一緒に、聖心にゆかりのあるフランスやイタリアを旅する機会がありました。創立者のお生まれになったジョワニーや、聖心の最初の学校ができたアミアン、ローマの聖心会の本部、当時棺の置かれていたベルギー・ブリュッセルなどを回りました。

創立者のお生まれになった家・生家はパリから約150キロ、車で2時 間ほどのジョワニーという小さな町にあります。石畳の坂を少しくだったところに生家があり、今では聖心の修道院があり、訪問客をとめてくださるソフィーバ ラセンターになっています。驚いたことに、ここでは訪問客を実際に使われていた生家の部屋に泊めてくださります。私の部屋はマグダレナ・ソフィアが大人に なるまで使っていたソフィーの部屋でした。ソフィー部屋は、レンガ色の石畳の床で、壁は白く、正面に中庭が見える大きな窓が2つある明るい部屋です。2つ の窓の間には、彼女が作った刺繍がかざられていました。二つの心、十字架、百合などが描かれた刺繍で、聖心のマークの原形になっています。入口の横には ベッドがあるのですが、それは小さなベッドでした。実際に横になると小柄な私でも体を伸ばすのがやっとの大きさです。200年以上前と同じものではないのですが、大きさは変わらなかったはずです。マグダレナソフィアはこんなに小さい方だったのかと、気づきました。強い意志でパワフルなイメージから、知らずと大きな印象をもっていたのだと思います。

ソ フィー・バラ・センターには、訪れた人が名前を書くノートがありました。世界中の人がジョワニーを訪れていることをうかがわせるものでしたが、中には漢字 で書かれた日本人の訪問客も何人か記帳していました。パリの中心地から離れ、決してアクセスのよい場所ではないジョワニーですが、多くの人がジョワニーを 訪れ、自分の生き方・価値観を確認して、帰るのでしょう。

ローマ市内、ヴァチカンから遠くないところに、ヴィラ・ランテと呼ばれる聖心の文書が保管されている場所があります。ここでは、聖マグダレナ・ソフィアがいろいろな人に当てて書いた手紙が保管されています。分かっているだけでも1万4千通あるそうです。初期のころは、羽ペンで書いている手紙もあります。この時代に1万4千通書くのはどんなに大変だったことでしょう。マグダレナ・ソフィアは多くの人に耳を傾けて、聴く人でしたが、同時に伝える人でもあったのでしょう。

ヴィ ラ・ランテには、聖マグダレナソフィアを正面から描かれた絵があります。彼女は、はずかしがりの一面があり、正面から描かれることを好まなかったそうで、 とてもめずらしい絵です。みなさんが思い出す御絵も少し斜め上の遠くをみておられる御絵ではないかと思うのですが、正面が苦手だというエピソードは、一人 の女性として親しみを感じました。この絵は、どの角度からみても、見る人と視線があうそうです。たしかに斜めから見ても、聖マグダレナソフィアがこちらを みている気がしました。温かみがあり、励ましてくださっているような視線に感じたのを覚えています。

不 二聖心に戻ってくる数年前、東京にある会社で仕事をしていました。就職をして聖心の学校から離れてしばらくたっていた頃、仕事をまかされることも多くな り、仕事はたのしく、やりがいがありました。しかし、一日にやらなければならないことの多さに、できれば周りにいる上司・同僚・後輩たちに話しかけられな くないと、正直思う日もありました。その時、ふと思い出したのは、中一の時にいただいた絵本の中のメッセージでした。

マザーバラにはやらなければならない仕事がたくさんありました。

でもどんなにいそがしくても

マザーバラのへやのとびらもこころのドアもひらいていました・・・

いつでもこまっている人の話をきいてあげられるように。

仕 事がどんなにいそがしくても、仕事の重要さ・多さを理由に、周りにこころのとびらをしめてしまってはいけないと、自分の生きたいと思う姿に、立ち直ること ができた時でした。聖心から遠く離れ、日々の生活のなかで聖心のことを思い出すことはほとんどなかった時期に、よみがえったメッセージでした。

 みなさんにとって聖マグダレナ・ソフィアはどんな存在でしょうか?中学一年生と高校三年生では、知識も思いも異なると思います。聖心を離れた時に、彼女から習ったことを思い出すこともあるでしょう。

不二聖心で、奇跡的にみなさんと出会うことができたのは、彼女の存在なくしてありえなかったことです。そして今、こうしている間にも世界に158ある聖心の学校では、生徒が集まり、学び、生きています。

彼女に感謝し、彼女の生き方に倣いたい、彼女の生き方をもっと学びたいと思います。

これで宗教朝礼を終わります。

T.H.(英語科)