シスター・先生から(宗教朝礼)

2012.05.09

2012年5月9日放送の宗教朝礼より

 おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。

感謝の気持ちをあらわす“ありがとう”という言葉、みなさんは一日何回伝えていますか?

この“ありがとう”という言葉の重みを実感したある出来事のお話をします。

私は、小さい頃から、おじいちゃんが大好きでした。

自転車に乗せてもらい町内を一周したり、公園で遊んだり、家にいるときはよく膝の中に入り、本を読んでくれたり、たくさんのお話をしてくれました。小さい頃のアルバムを開いてみると、祖父との写真ばかりで、よく可愛がってくれていたんだなあと実感します。

私が小学校 に入ってまもなく、そんな元気で明るい祖父はガンにかかり、入院。闘病生活がはじまりました。今まで家に帰ると温かく迎えてくれた祖父が居ないのはとても 寂しく、毎日のように病院に通い、会いに行きました。病気で苦しいのにもかかわらず、私が行くと笑顔で迎えてくれます。限られた時間ですが、祖父に会える その時間が一日うちで一番楽しく待ち遠しい時間となりました。

小学校3年生のある日、そんな祖父の具合が急に悪くなったと連絡が入り、すぐに病院へ向かいました。数年前まで体も大きく、元気に一緒に遊んでくれていた祖父ですが、もうその元気はどこにもなく、苦しそうにしています。

私たち家族や親戚が集まり、ベッドで寝ている祖父を囲んだ時、祖父は最後の力を振り絞るように“ありがとう”と言い、目をつぶりました。その数分後、祖父は息を引き取りました。

“ありがと う”という言葉で人生を締めくくった祖父。たった5文字の言葉ですが、小学校3年生ながら、亡くなってしまったという悲しさの中に、今まであまり気にして いなかった“ありがとう”の言葉の重みをじーんと感じ、なぜか少しだけ心が温かくなったのを覚えています。それまで何気なく使っていた当たり前の言葉です が、その日から私にとって特別な言葉となりました。

この“ありがとう”という言葉、一日のなかで探してみるとたくさん伝える機会があります。

買い物をした時の“ありがとう”

授業の終わりの挨拶の“ありがとう”

今、不自由なく生活できていることへの“ありがとう”

そして、いつも頑張っている自分自身への“ありがとう”

色々な場面で“ありがとう”と伝えるチャンスがたくさんあります。

“ありがとう”と伝えている時は、不思議と自分も優しい気持ちになれると思いませんか?言われた方も、そして言った方も心が温かくなって幸せな気分になれる言葉がこの“ありがとう”だと思います。生きていれば、嫌なことや苦しいと思うことに必ず直面すると思います。しかし、どんなことがあっても“ありがとう”という感謝の言葉が伝えられるようになれば、自然と人生が豊かになるでしょう。

有名な言葉に 

『心が変われば、態度が変わる。 

態度が変われば、行動が変わる。

行動が変われば、習慣が変わる。

習慣が変われば、人格が変わる。

人格が変われば、運命が変わる。

運命が変われば、人生が変わる。』 (野村ノート 野村克也より)

とありますが、この言葉の初めに「言葉が変われば、心が変わる」といれるとぴったりだと思います。

“ありがとう”という言葉だけでなく、全ての言葉は魔法の力をもっていると感じます。

言葉によっ て傷つき、言葉によって自然と笑顔が生まれます。日常の何気ない会話の中の言葉の意味をもっと深く考えて発してほしいと願っています。周りのひとに“あり がとう”また、自分自身にも“ありがとう”と素直に伝えられるようになりたいですね。心からの“ありがとう”が広がれば、笑顔いっぱいのすばらしい世界に なると思っています。祖父が最後に残してくれた言葉。“ありがとう”をいつまでも大切にしていきたいと思います。

そんな大好きな祖父のことを思い出すと今でも会いたいなあ…という気持ちになります。

1年前の4 月、この学校でみなさんと出会いました。初めは新しい環境に戸惑い、不安の毎日。一日を過ごすのがやっとでしたが、朝・夕同じ時間に鳴るタワーベルの鐘の 音は心を落ち着かせることができ、安心できる時間でした。今まで1人で心を落ち着かせる時間はあるようでなく、この学校にきて忘れてかけていた自分と向き 合う時間と出会いました。いつの日か、30秒ちょっとのこの時間は、私にとって祖父に近づける時間となったのです。

朝は「今日 も一日がんばるね」と、夕方には「今日はこんなことがあったよ、今日も一日ありがとう」など、毎回心の中で祖父に話し掛けています。そうすることで、朝は エネルギーがわき、夕方にはホッと安心するのです。忙しい毎日ですが、少しだけでも静けさの中で、自分と向き合える時間があることは素敵なことだと思いま す。

これから、体育大会や試験など、次から次へと行事がやってきます。自分を見失いそうになりがちですが、一人ひとりがどこかで自分と向き合い、少しでも心を落ち着かせる時間を見つけることが出来たら、心からの“ありがとう”で溢れる学校になるでしょう。

これで、宗教朝礼をおわります。

保健体育科(Y.O)