校長室から

2021年02月

2021.02.22

1832年の頃

 日本の新型コロナウイルス感染者数の発表は、累計で40万人を超えました。学院のある裾野市では、2月20日(土)に、市内で37例目となる感染症患者の発生が発表されました。一日も早い収束を願ってやみません。

創立者の時代も、様々な伝染病に悩まされました。たとえば、1832年にパリを襲い、全国に蔓延したコレラの影響により、パリだけで2万人、フランス全土で10万人が亡くなったといわれます。フランスの聖心学院でも、生徒たちの健康を守るために様々な対応がなされ、なんとか大事を免れたようです。パリの学院では、この疫病で保護者を失った子供たちを15人、引き取ったとの記録も残されています。1830年の革命の影響とも絡み合って、非常に困難な時でした。
https://rscjinternational.org/news/epidemics-society-sacred-heart-lifetime-madeleine-sophie-barat-1779-1865

同年5月、コレラの流行による検疫の厳しい中、創立者は、イタリアの学院の視察を決行しています。この頃は、聖心会に託された様々な事業が軌道にのり始めた時期で、ヨーロッパや北米に次々に修道院や学校の創立も検討されました。このようなエネルギーの源に、神様への愛と、生徒たちへの愛があったことはいうまでもありません。 

2021.02.15

春の気配

 先週は、卒業週間でした。高校2年生がオンラインを使って企画した送別会は、まるで一篇のすてきなドラマか映画を見るようでした。聖心スピリットあふれるメッセージが現代的に表現されていて、とても感動しました。

 卒業式は、保護者の方々にもご参列いただき、チャプレンによる「感謝の祈り」、「伝統の灯を下級生に託す儀式」等を含め、高校3年生の旅立ちの時をご一緒にお祝いいたしました。コロナ感染予防のため下級生は代表だけの参加となりましたが、心はしっかりとつながっていたと思います。卒業生代表の言葉に耳を澄ましながら、改めて、コロナ禍の中、最高学年としての務めを真摯に果たし、学院生活に貢献してきた高校3年生の方々に、感謝と尊敬の念を抱きました。創立者ソフィア・バラも天国から微笑んでいらしたことでしょう。



 今は考えられないことですが、一年半前、私たちは皆でフランスに行きました。(略)ジュワニーの古い町並みや葡萄畑を歩きながら、創立者の「私はたった一人の子どものためにもこの学校を建てたでしょう」というお言葉を思い出し、SDG4番と創立者の言葉に響き合うものを感じました。
 一人でも多くの子どもたちに良い教育を受けさせるという創立者のお考えは、すべての人々に質の高い教育を与えたいと願うユネスコの理想に通ずるものがあると感じたのです。「たった一人の誰かのためにも」という精神を生きることが、創立者の精神を現代において生きることであると学んだ旅でした。
(2020年度卒業式「卒業生の言葉」より)


 彼女たちの命を受け継ぐ新入生を迎える準備も、並行してなされています。別れと出会いの時が交錯する日にあって、天そそる富士を戴く学院には晴れやかな春の気配が漂っています。

2021.02.08

For The Sake of One Child

 2021年は2月12日が台湾の春節にあたります。台北にある聖心女子学院より全世界の聖心学院にお祝いのビデオが送られてきました。(2月2日「不二聖心からのお知らせ」に掲載)パンデミックの中での連帯感が感じられるメッセージでした。例年なら、1月から2月にかけて台湾からの交換留学生が本学院に滞在、1月には韓国ソウル聖心生のグループも訪問し、にぎやかな交流がなされます。

台湾聖心の壮麗な本館は、ローマの聖心会本部にいらしたマザーBenzigerの発案で、全世界の聖心学院の生徒からの寄付により集まったお金で建設されました。本年度、創立60周年を迎えた台湾聖心が製作した“For The Sake of One Child”というアニメーション・ムービー(35分程度)の中で、当時の様子が紹介されています。(10分30秒以降参照)。
https://rscjinternational.org/news/taiwan-mission-koc-province-celebrates-its-60th-anniversary(こちらをクリック)
本学院の生徒の皆さんも、ぜひ、ご覧ください。

実際に顔と顔を合わせての再開がかないますように!

2021.02.01

The Daffodils

 キャンパスに水仙が咲き始めました。“I wander'd lonely as a cloud”で始まる英国のロマン派の詩人ウィリアム・ワーズワースの「水仙」(The Daffodils)は、中学校のスピーチ・コンテストの定番で、学年全員での暗唱がなされます。自然を題材にした多くの詩を残しているワーズワースの詩は、自然豊かなキャンパスで学ぶ生徒たちによく似合うように思います。

今年は、コロナにより学年の暗唱は見送られましたが、生徒たちは、“I gazed - and gazed - but little thought What wealth the show to me had brought.”と表現されているような「後になって、自分を支えるものとなっていたと気づく経験」を重ねていくことでしょう。


  For oft, when on my couch I lie
  In vacant or in pensive mood,
  They flash upon that inward eye
  Which is the bliss of solitude;
  And then my heart with pleasure fills,
  And dances with the daffodils.
    William Wordsworth “The Daffodils”より