校長室から
2020.09.28
時
9月6日にアルフォンス・デーケン先生(イエズス会司祭)が帰天されたとのニュースが、様々なメディアでも流れました。日本における死生学研究の第一人者として、長年、上智大学で教鞭をとられ、また大学を超えて多くの活動に携われた方です。信仰に根差したあたたかくユーモア溢れる語り口の講演会や多数の著書により、多くの人々が影響を受けました。
先生は、祖国ドイツでの少年時代、祖父にあたる方が、兵士によって射殺される光景を目の当たりにされました。にもかかわらず、後に家宅捜索のために自宅に入ってきた兵士に、自ら手を差し出して挨拶されたそうです。それは親から受け継いだカトリックの信仰を、自分で選び直した大切なカイロスの時であったと、語られています。
ギリシア語には時を表す言葉が2つあります。χρόνος (クロノス)が客観的に流れる時間をいうのに対し、καιρός (カイロス)は、決定的な瞬間を指す言葉です。ご帰天の報に接し、感謝の祈りのうちに、生かされている「時の重み」を感じています。