校長室から

2020.08.14

平和を希求して

 聖心会霊園と岩下家墓所との間に、大きな十字架がひっそりと立っています。元々は東京の聖心女子学院にあったものです。1945(昭和20)年の東京大空襲は、東京聖心の校舎にも大きな被害をもたらしました。本館を焼失させた火は、聖堂に燃え移るかと思われたのですが、鉄扉にはばまれ、その壁面にかかっていた十字架の前で止まったと聞いています。

 十字架の木の部分はぼろぼろに焦げていたそうで、その後、修復されたものが、今、ここに立てられています。不二聖心のキャンパス(当時はまだ岩下家の所有で、不二農園・温情舎と呼ばれた時代)は戦禍を免れ、疎開者を受け入れたような場所ですが、戦争や平和を考えることにつながるものがあちらこちらに残されています。

 教皇フランシスコは、原爆投下から75年目を迎えた広島・長崎へのメッセージの中で、昨年の来日でのご経験をもとに、「わたくしは、平和を強く希求し、平和のために自らを捧げようとする、今日の人々、特に若い人々の熱望を、今も心にとどめ続けています」と述べられました。不二聖心で学ぶ生徒たちの中にも、その情熱は培われています。